モフモフ社長の矛盾メモ

ヒゲとメガネとパンダと矛盾を愛するアーガイル社のモフモフ社長が神楽坂から愛をこめて走り書きする気まぐれメモランダム

全政党・候補者がネット選挙に取り組むべき3つの理由 〜 史上初のネット選挙は情報収集戦である

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史上初のネット選挙を間近に控えて、各党の動きが活発になって来ました。
と、同時に広告代理店やPR会社、ソーシャルメディア活用支援の会社も、各社さまざまな動きをしています。

徳力さん、どうなさったんでしょうか

そんな中で、少し気になる記事が出ていました。自らもアルファブロガーであり、ブログを活用したマーケティングで有名なアジャイルメディア・ネットワーク代表の徳力さんのブログ記事です。

[徳力]うちの会社がネット選挙系案件を全てお断りしている5つの理由

この記事であげられている理由は、下記の5つでした。

  1. 次の選挙でネット選挙解禁されるから、ネット活用しようというのは遅すぎる
  2. 今まで使っていなかった人が、いきなり全力活用するのはリスクが高すぎる。
  3. ネット選挙は解禁されたけど、他にも意味不明のルールが多々残っている
  4. AMNのファン重視、アンバサダー重視のアプローチに、選挙支援は馴染まない
  5. ネット選挙バブルが激しくて、ちょっと怖い

これを見て、あれっ、いつものフラットな視点、穏やかながらストレートな発言の徳力さんらしくないな、と思ったのです。たぶん、一番言いたいことは4.で、他はその言い訳っぽいんじゃないのかな、と。

5.については同意です。

盛り上がっているのは、以前から包括的に選挙支援をやっている総合代理店と、ネット選挙でひと儲けできるんじゃないかと考えた人達と、一部のメディアだけ。ソーシャルメディア活用支援業界の界隈は(質問レベルの問い合わせは多々ありますが)意外と静かなものです。そもそも、マスメディアの広告案件と比べたら、まだまだ誤差みたいな金額感のソーシャルメディア活用支援業界を、成長市場なんて言われるのにも違和感があります。

1. 2. 3. についても、ネット選挙活動におけるソーシャルメディアの活用を「ファン獲得目的の宣伝」という視点だけで捉えるなら、ほぼ同意です。

今までにソー シャルメディアを使ったことも無い政党や候補者が、選挙前に(しかも宣伝のために)突然使い始めるのはリスクが高過ぎる。

でも、リスクが高そうだからといって、何もせずに様子見しているだけでいいのかな(その方が楽ちんだけど……)、とも思うわけです。特に、ソーシャルメディア業界でも影響力の大きい経営者でありブロガーでもある徳力さんが、ソーシャルメディアの根本的なリスクを理由に、今回は様子見した方がいいですよ、と勧めるのは、どんなもんだろう、と。

全政党・候補者がネット選挙に取り組むべき3つの理由

僕が経営しているアーガイル株式会社では、ネット選挙案件もお受けしています。
ネット選挙が解禁した翌週には、ネット選挙支援パッケージもリリースしました。

アーガイル社、ネット選挙に特化したソーシャルメディア活用支援パッケージ『ソーシャル選挙支援ネット』の代理店向け先行販売を開始

初のネット選挙となる次回の国政選挙から、全ての政党や候補者が、ネット選挙対策(特にソーシャルメディア活用施策)に本気で取り組むべきだと考えているからです。その理由は、以下の3つです。

  1. ソーシャルメディア活用は発信よりも、まず情報収集(傾聴)から始めるべき
  2. ソーシャルメディアを一切使わなくても、ネット炎上の構造を理解しない限り、炎上リスクからは逃れられない
  3. 今回のネット選挙で様子見をした政党・候補者は何も学習できず、次回もまたゼロからのスタートになる

これら3つの理由について、ひとつづつ解説して行きたいと思います。

1. ソーシャルメディアの活用は情報発信よりも、まず情報収集(傾聴)から始めるべき

話す前に聞く、場を観察する、ということです。
政治家が、自分や自党に関するクチコミすら確認せずに、闇雲に情報発信を始めるなどというのは、ホームかアウェイかもわからない満場のステージに飛び入りして場の空気を読まずに一発ギャグを繰り出すくらいのギャンブルです。

しかし、平常時には政党や候補者についてどんなクチコミが発生しているのか、ネット選挙解禁後の公示期間にどういうクチコミが発生するか、という情報の蓄積そして分析は、今始めないと間に合いません。

史上初となる今回のネット選挙は、ネットの利用に慣れている候補者にとっては今までのノウハウを結集させて賭けの勝負に出るタイミングですが、今まで活用して来なかった人にとっては、生のクチコミに触れて今後の戦略を立てるべき時だと思います。

2. ソーシャルメディアを使っていなくても、ネット炎上の構造を理解しない限り、炎上リスクからは逃れられない

Twitterを始めたばかりのユーザーが(しかも政治家が)、アルファ・ツイッタラーのマネをしても、火傷するだけです。

しかし、炎上が怖いからTwitterを無視する、というのも安全策ではありません。Twitterのアカウントを持っていようがいまいが、Twitter上で発言をしたかどうかとは関係なく、炎上はTwitterを通じて拡散するものだからです。

橋下さんの慰安婦に関する発言はTwitterで大炎上していましたが、その発端はTwitter上ではありません。選挙活動を通じて同様の失言事件が起こった時、Twitterをやっていないからと言ってネット上の意見を完全に無視した対応策を取って、それで事態は収束するのでしょうか。そもそも、自分や自党についてのクチコミをウォッチしていなかったら、炎上にいち早く気付くことが出来るのでしょうか。

炎上の火元から目を背けることなく、しっかり経緯を把握することが重要です。

3. 今回のネット選挙で様子見をした政党・候補者は何も学習できず、次回もまたゼロからのスタートになる

今回の選挙で、積極的にネット上の反応についての情報収集を行わなかった政党や候補者は、次回の選挙でも全く武器のない素手の状態からスタートすることになります。

今回のネット選挙は次回以降のネット選挙のための「情報収集戦」です。

これは断言してもいい。
今、情報収集を始めなくて、いつ始めるというのか、を問いたい。
そして今までソーシャルメディアに触れて来なかった政党や候補者が、専用のツールも専門家の手も借りずに、自力でリサーチや分析が出来るのか、ということも。

今回のネット選挙を通じて、冷静に情報を蓄積し分析をした政党と候補者は、次の選挙において、大きなアドバンテージを得られると思います。

少なくとも、焦って慣れないソーシャルメディアを使って試行錯誤の情報発信を試みる政党・候補者や、どうせわからないから今まで通りにやるよと開き直る政党・候補者に比べて、中長期的に見て格段に大きな成果を得られるでしょう。

「炎上が怖そうだ」から「よくわからない」から、「しばらく様子を見る」と言いつつ何もせず、先に始めた競合に大きく差をつけられたのを見て「今から始めても、どうせ……」とあきらめつつ、数年後には結局は取り組まざるを得なくなって数年遅れで取り組みを始める……。

これは、ソーシャルメディア普及初期に多くの企業で起きていたことの繰り返しです。

ソーシャル普及初期に起きていたこと

僕の経営しているアーガイル株式会社は、2009年12月に創業以来、Twitter活用支援の専業です。最近はFacebook活用も支援していますが、9割方はTwitter案件です。創業直後に、国内で最初のTwitter分析ツールを自社開発してリリースできたおかげで、導入事例が一気に増えて軌道に乗りましたが、当時は周囲に「ソーシャルメディア活用支援」を名乗る会社さえ、全く見当たりませんでした。

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Twitterで何ができるのか教えて欲しい」という問い合わせがあり、説明をしに行くと「なんとなくわかりました。でも炎上リスクが怖いので検討します」ということで、話が流れることが多かったです。

そんな感じで、ソーシャルメディアの黎明期から、企業向けのソーシャルメディアポリシーやTwitter活用のセミナーなどもやりつつ歩んで来たわけです。その過程で強く感じたのが、「炎上が怖いから」という理由でソーシャルメディアを敬遠し、存在すらも無視しようとする会社ほど「炎上リスクに弱い」という逆説的な真理です。ソーシャルメディアを使って発信するかどうかは各自のポリシーでいいと思います。ただ、ソーシャルメディアで自分についてどんなクチコミが発生しているかを知っておくことは、リスク管理の基本だと思うのです。

ソーシャルメディア黎明期の多くの企業に蔓延していた「ソーシャルメディアに対して、目と耳を閉じ、口をつぐめば炎上リスクは消える」という幻想が、今度は政党や候補者の間に広まることを恐れています。

でも各社ごとの都合ですよね

ネット選挙への取り組みは、誰もが未体験という不安な状況と、炎上や法令違反の発生時のリスクの高さから、慎重な会社ほど様子見をして敬遠しています。

弊社は、クチコミ分析ツールが強みなので、選挙期間のクチコミのウォッチに特化したツールは提供しますし、一般的なソーシャルメディアポリシーや炎上対策のセミナーなどの依頼も受け付けます。でも、候補者や政党の公式Twitterアカウントの運用代行とか、発信内容のライティング、支持者を増やすためのお手伝い、などのお仕事は受けるつもりはありません。

その理由は……、非常に勝手な話なんですが徳力さんのあげた5つの理由(4.を除いた)とほぼ同じです。ソーシャルメディアに慣れていない候補者が突然発信を始めるのは、リスクが高すぎるということ、そして突貫工事で始めても期待するような効果が出るとは思えないこと、さらに法令違反になってしまう可能性も高いことが、その理由です。

ただ、このネット選挙を今までと同じ平常運転で過ごすことは、おすすめしていません。どんな活動をしたら、どんな反応があるか、その詳細なデータを取得して分析をし、次の選挙活動に活かして行くべきだと思っています。

ご意見、ご感想など、お待ちしております。

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