モフモフ社長の矛盾メモ

ヒゲとメガネとパンダと矛盾を愛するアーガイル社のモフモフ社長が神楽坂から愛をこめて走り書きする気まぐれメモランダム

うなぎとはてな

まずは、ひとりの鰻好きとして、鰻の完全人工養殖の実用化の道が見えて来たことを、素直に喜びたい。

MBCニュース | 「苦労が報われた」完全人工生産ウナギ試食会 鹿児島・新日本科学が2014年から研究

 

しかし、この記事のブックマークを見て、はてなブックマーカーには、鰻が好きなのに自主的に「鰻断ち」をしている人が、やたらと多いことがわかった。

[B! 食] MBCニュース | 「苦労が報われた」完全人工生産ウナギ試食会 鹿児島・新日本科学が2014年から研究

 

この活動、本当に意味がわからない。

 

「絶滅危惧種だから」という理由をあげる人も多いが、レッドリストに追加されている、アワビ、松茸、クロマグロなども、食べるのを断っているのだろうか?

そもそも、一般に大量に流通している食材を個人的に食べないことで反対活動、という遠回りな手段を選ぶのが意味不明だ。普段から、鰻を食べようとした知人友人に対しても、食べるべきでない、と啓蒙活動をしているのだろうか?

 

しかも、鰻断ちしている人の多くは、「鰻が好きで食べたいけど我慢してる」「完全養殖はよ来い」などと言っている。そんな遠回りの自然保護スタンスアピールのためだけに我慢できるくらいなら、そもそもそんなに鰻好きじゃないよね?

繁華街には鰻屋が普通にあるし、明らかに違法な方法や特殊な店や超高値で取引しないと手に入らない食材でもなく、普通にそこらのスーパーにも牛丼屋にもファミレスにも大量に並んでる。そんな流通状況で、個人が鰻断ちをしたところで、自己満足以外に何の意味があるのだろうか。チェーン店の雑な調理で無駄に大量消費される鰻を買わないようにする活動ならまだわかるが、専門店の鰻の不買運動をして、何の意味があるんだろうか? 鰻屋を潰したいの?

 

また「流通に反社や違法行為が関わってるから食べたくない」という理由を述べる人もいる。

でも、シラスウナギ(鰻の稚魚)の入手手段として、違法な手段や反社が絡んでる例があるからと言って、その悪質な手口の流通経路や店舗を特定するわけでもなく、漫然と鰻全体の不買運動をしても、非合法な取引を減らせるわけじゃないよね。むしろ、合法的な手段で取引をして来た店舗の経営まで締め付ける結果にならないか? 反対活動のやり方が過剰で雑なんだよ……。

 

そもそも、鰻が完全人工養殖が可能になるまで食べない、と言って鰻断ちをしてる奴らは、いざ完全養殖鰻が流通するようになった時に、どこの鰻屋で食べるつもりなんだ? 老舗の高級鰻屋か? 庶民派の鰻屋か?

 

お前らが勝手に鰻断ちをしてる間、その鰻屋が潰れないように支えて来たのは、誰だと思ってるんだ? 我々、鰻を愛し、価格が高騰してもコンスタントに鰻を食べ続けて来た鰻好き達じゃないのか?

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自分の鰻に対するスタンスは、こうだ。

『鰻を食べたくなったら、閉店しないでほしい老舗の美味しい鰻屋で、美味しい鰻を好きなだけ食べる。ただし、無駄な消費ロスが発生する土用の丑の日には鰻を一切食べない。土用の丑の日に鰻を食べないようにしよう、という啓蒙のための発信は(気が向いた時に)続ける』。

 

鰻好きが定期的に食べて支え続けないと、老舗の鰻屋の秘伝のタレや仕込みや調理などの鰻食文化なんてすぐに廃れてしまう。コロナ禍の影響だけでなく、ここ10年で潰れた老舗の鰻屋はたくさんある。自分は、完全養殖が実現するまでの間も、食べて支えるつもりだ。

そもそも、完全養殖が実現するまで食べない、と宣言している人は、初期の完全養殖鰻が今までの鰻と同等もしくは高い値段で流通するようになったとして、すぐに鰻を食いに戻って来るのだろうか? 正直、怪しいと思っている。本来なら、そのタイミングでこそ買い支えるべきなのに、まだ高いとか理由をつけて食べなそう(勝手な憶測です)。

 

しかし「土用の丑の日」の消費には、自分も断固反対したい。スーパーやコンビニではクリスマスケーキのように予約までさせて、そのたった1日のために大量の鰻を確保する意味がわからない。

クリスマスケーキならいい。その日までに大量に作るパティシエや製造作業員には地獄だが、小麦粉やクリームやチョコやイチゴが資源として枯渇することはない。おせちや恵方巻きも同じだ。

しかし鰻は水産物だ。しかも、今はまだ完全養殖が実現できていない、一度に大量に獲れば枯渇して減ってしまう絶滅危惧種だ。それを、旬でもない時期に、クリスマスケーキのようにお祭り気分でピーク消費させるとか、頭がおかしいとしか思えない。

 

平賀源内の考えたキャッチコピーだか何だか知らないが、もはや無理して特定の日に鰻を売る必要もないだろうに、なぜ未だにこんな風習を辞めないのか。

 

すべての鰻断ちをする必要はないが、土用の丑の日の鰻断ちはすべきだし、広く呼びかけて行くべきだと思っている。鰻好きの多くは、旬でもない土用の丑の日に、わざわざ混んでる鰻屋に食べに行ったりしない。

 

普段から時々お気に入りの鰻屋で食べて、丑の日やファーストフードでの大量消費には、ノーと言う。そして完全養殖の実現を応援する。それが、鰻好きとしての在り方なんじゃないかと、自分は個人的に思っている。

 

ともあれ、完全養殖が見えたことで、鰻が絶滅するのは回避できそうで本当に良かったです!

 

追記:

今までの鰻断ちの否定というよりも、「2026年度に10万尾の量産目標」という具体的な計画まで出て、今や鰻という種自体の絶滅可能性がほぼゼロになっても、まだスタンスを変えずに思考停止したまま鰻断ちを継続しようとしているのが、謎なのだ。

鰻の消費量を減らすべきフェーズから、2026年に向けて鰻食文化と鰻専門店を維持すべきフェーズへと、完全に変わったと思うのだが……?

この段階で、年に数回ほどお気に入りの鰻専門店に行くことすら控える理由が本当にわからない。老舗が潰れ、不味い調理のスーパーやコンビニや牛丼屋の鰻だけが残り、結果的に鰻食文化が今後もどんどん廃れて行ったら、そもそもニーズが減るから完全人工養殖鰻も量産できなくなって、単価も未来永劫落ちないのだが?

完全人工養殖ウナギが広く安く普及すれば、違法手段での流通問題も完全に解決するはずなので、ニーズを落とさないことが非常に重要なわけで。逆に現時点で、これ以上に有効な違法流通の撲滅手段があったら、教えてほしい。