モフモフ社長の矛盾メモ

ヒゲとメガネとパンダと矛盾を愛するアーガイル社のモフモフ社長が神楽坂から愛をこめて走り書きする気まぐれメモランダム

UI源平合戦! もしiPhoneがフラットデザインを採用したら

ーー2013年。

通信キャリアの電波が星を覆い、ソーシャル・メディアの網が張り巡らされても、
炎上しないブロガーが影響力を持てるほどにはフラット化していない近未来ーー。

MicrosoftのMetro UI(Windows PhoneやWindows 8)、そしてGoogleのUIに端を発した、フラットデザインUIの潮流は、ついにUIデザイン界の首領(ドン小西)AppleiOSまでも飲み込もうとしていた。

と、どうでもいい前置きはこのくらいにして。

流行ってますよね、フラットデザイン

ソシオメディア | フラットデザインはUIを進化させるか


フラットデザインとは、ボタンなどの、影・光沢・立体感を思いきって排除したシンプルなユーザーインターフェース(UI)のこと。まさにシンプル&ミニマル! ミニマリズムの極地。mihimaru GTならぬミニマルFlaTですよ。

平たく言うと、みんな平たくなってるわけです。凸版も平版になるくらいの勢いで。

言うなれば「平氏」。
昨今の世は、平氏にあらねばUIデザイナーにあらず! なんてことになってる。そんな空前の平氏ブームの中で、今まで「源氏」の最大勢力だったAppleがどう動くのか、全インターフェース界が注目している。

カレンダーアプリの背景の革やステッチの質感にこだわったり、メモ帳アプリにちぎり残しの紙ゴミとかつけたり、Podcastにオープンリールデッキのギミック演出を採用したりしてきたApple

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この、現実世界そっくりのディテールをインターフェースに持ち込む手法「スキュアモーフィズム(skeuomorphism)」は、AppleがOSX以降のインターフェースデザインのポリシーとして貫いていたもの。

まさにフラットデザインの対局にある思想。言ってみれば現実世界という表現の源流まで遡り、ディテールをそのままデザインに流用する派閥、すなわち「源氏」!

Appleが推奨するSkeuomorphic Designとそのメリットデメリット | Design Spice


時代はまさに、UI源平合戦なわけですよ!!

そんな中、次のiOS(iOS7)が、フラットUIになると噂されている。

ジョナサン・アイブ氏デザインのiOS 7、一新されたフラットなデザインに : ギズモード・ジャパン

まさに、源氏が平氏に寝返ったくらいの衝撃。

どーしたんだ、品川ーー!!(Appleーー!!)という庄司の声が聞こえて来そうな展開です。「フラットデザイン芸人」をアメトーーク!の企画にしたいくらい。

で、それを受けてネット上では、デザイナーの有志たちが競って「もしiPhoneがフラットデザインUIを採用したら」なんてコンセプトモデルを作っては、盛り上がってるわけです。

そんな、フラットUIになったiOSのイメージを、いくつか紹介。

 

もしiPhoneがフラットデザインを採用したら

まずは、ポップな色使いがかわいい作品。

Source: behance.net via Frank on Pinterest

 

引用元: http://www.behance.net/gallery/iPhone-Flat-UI-Concept/7840883

 

続いては、気合の入った商品紹介ムービー作品。

iOS 7 : Welcome to the future of the iPhone - YouTube

 

どうでしょうかね。

フラットデザインって、確かにシンプルでかっこいいんだけど、ユーザー視点ではどうなのかな、ってなことも思うわけです。
特に、iPhoneスマートフォンを初めて使う人たちにとって。

 

直感的インターフェースって何なの、それ美味しいの?

「直感的なインターフェース」って言葉は、わりと良く耳にする。
でも、直感的なUIって初見でいきなり使える、って意味じゃないんだよね。

 

すべては、幼少期からの地道な繰り返し学習の成果。
男・女トイレのピクトグラムだって、学習がなければ直感的に判断なんかできない。

結局のところ、

  • 見覚えがある意匠かどうか
  • 類似のものと混同しないかどうか
  • 判断を邪魔するノイズが少ないかどうか

……あたりの勝負じゃないかと。

これらを実現するのなら、平氏(フラット)でも源氏(リアル)でも問題ない。

 

iPhoneがさんざん普及して、ユーザーの学習も進んだから、もう少し抽象化したフラットデザインにしても問題ないタイミングだ、という考え方もあります。一方で、液晶が高精細化していく中で、さらにUIのリアル志向が進んで行けばデザインのコストがどんどん上がって行くからシンプルにしよう、というのもあるよね。

もちろん、さっき出した作品はあくまで勝手な予想。Appleがどんなデザインを出して来るかは、まだ誰も知らないわけで。Appleのデザイン部門のトップ、ジョブスの正統後継者とも言われるジョナサン・アイブ氏が、驚くほどわかりやすいフラットデザインUIを発明してくれるかもしれないぞ! iOS7の発表を、期待して待とう!

 

平氏(シンプル)と源氏(リアル)は振り子のように

思うに、シンプルさと抽象化を求める平氏(フラットデザイン)とリアルさと具体化を求める源氏(スキュアモーフィズム)とは、ゆっくりと動き続ける振り子のようなもので、時代ごとにどちらかに大きく振れながら、少しづつ未来へと進んで行くものなんじゃないだろうか。

数年前は、CG技術の進歩と高解像度化でようやく可能になったリアルな表現に振れていたけど、ここ1,2年はタブレット型デバイスの普及による「慣れ」で、より抽象化するフラット方向に振れようとしている。それだけの話で、インターフェースとして、どちらが優れてるとか劣っているとか、そういう問題じゃない。

 

そんな今だからこそ、観返したいアニメが「電脳コイル」だ

電脳コイル Blu-ray Disc Box

電脳コイル Blu-ray Disc Box

 

身につけられる(ウェアラブル)コンピュータデバイスの「電脳メガネ」が、ちょうど現代の携帯やスマホのように、老若男女に普及した近未来の日本での、小学生の日常を描いた作品。

本作は、メガネ型デバイスが普及した未来を、緻密な設定とSF考証のもとに描いており、2008年のSF大賞も受賞している。あの、ARアプリの先駆け「セカイカメラ」を作った頓智ドットの井口さんも多大な影響を受けたと公言している作品だ。未見の人は最初の一話だけでもいいので、ぜひ一度観てほしい。

ちなみに、その井口さんは、今こんなこと ↓ をしている。

Google Glassよ、君に仲間が現れた! セカイカメラ発明者がTelepathy Oneを発表

 

その世界では老若男女が一日中、電脳メガネをかけて生活している。電脳メガネを通して空中にAR(拡張現実)として案内表示や仮想キーボードが浮かんで見えるだけでなく、メガネを通じて見える犬「電脳ペット」を飼ってたりする。目に見える景色には全て現実の物体に、画像データのテクスチャーが張られているので、データが更新されてない廃墟などは、壁の空間テクスチャが壊れて「データがありません」というエラー表示になってたりする。

電脳コイル 第9巻 限定版 [DVD]

そんな電脳ペットの病気や、空間に生じたバグを治すためのアイテムは、なんと紙の「おふだ」だ。正確に言えば、電脳メガネを通して見ると紙のおふだそっくりに見える、「手で持って対象物(電脳物質)に貼り付ける」というジェスチャーで起動するアプリ(プログラム)だ。

つまり、「電脳コイル」の描く未来世界のインターフェースは、フラットデザインのUIとは真逆にある、究極のリアル志向=スキュアモーフィズム・デザインなのである。これもまた、インターフェースの進化のひとつの形じゃないだろうか。

 

ネットとリアル、ビットとアトム

電脳コイルの世界では、現実に存在する「物質」(アトム)と同じくらい、データで構成された「電脳物質」(ビット)の価値が大きい。バグやウイルスにやられても、現実の命はなくならないが、データが破壊されたら修復に金がかかるし、かなり痛いわけだ。こういう価値観は、パソコンのHDDデータや、ゲームのセーブデータ、携帯の電話帳のデータなどでは、既に現実的な話。

一方で、ビットが重要になりすぎると、アトムの方へのゆり戻しが来たりする(身体性の回復、的な文脈でも語れそうだ)。ネットが普及したことで、逆説的にリアルイベント(ライブ、オフ会など)の重要性が増しているように。リアルとビットの重みづけは今後も振り子のように写り変わって行くだろう。

また、昨今のソーシャルメディアの普及で、現実世界(リアル)での人格と同じくらい、ネット上の人格が影響力を持ちつつある。自分は4年前から、企業のソーシャルメディア活用を支援する会社を経営しているので、その辺りは強く感じている。ドラゴンボールのスカウターのように、電脳メガネ越しに相手の顔を見ただけでTwitterのフォロワーやKloutスコアが戦闘力として表示される時代も、もうすぐなんじゃないかな。炎上経験があるブロガーは、炎属性のマークが浮かんで見えたり。中二病っぽい人は闇属性が浮かんで見えたり。

 

この電脳メガネのようなデバイスが初めて製品化されるのが、今年発売予定のGoogleGLASSというのは、言うまでもない。

Google Glass - What It Does

宙に浮かんで見えるAR表示は、どうやらフラットデザインのようだけど、そのうち現実と見分けがつかないほどリアル志向のインターフェースも出現するんじゃないかと、今から楽しみにしている次第だ。

 

最後に、はじめまして

このブログは、これが開設して最初の記事です。
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一番最後に、この記事が今回フラットデザインUIについて調べ始めた発端。
すごく内容がまとまってる記事なので、必読。