モフモフ社長の矛盾メモ

ヒゲとメガネとパンダと矛盾を愛するアーガイル社のモフモフ社長が神楽坂から愛をこめて走り書きする気まぐれメモランダム

「スマホの次は、ウェアラブルデバイスが来る」の嘘

スマホの次は、ウェアラブルデバイスの時代」的なバズワード満載の意見や記事が、いまだにネット上に散見される。

newspicks.com

 

勝手に断言するが、未来永劫「メガネ」と「スマートフォン(以下、スマホ)」は、完全に競合もしないし、融合もしない。やや遠い未来、体内にナノマシンを埋め込むことが全人類に普及しきるか、他人に顔を見せない習慣が全世界の主流になるか、人間が道具を手に持たない体型に進化でもしない限り、スマホのように手に持って使うデジタルデバイスが廃れることは、絶対にあり得ないことだと断言する。

こんな当たり前のことを書いたブログ記事が見当たらなかったので、このブログエントリを書いた。自分はApple Watchの発売以来、1年間意地になってほぼ毎日着け続けている経験があり、ウェアラブルデバイスについて語る権利は、それなりにあると考えている。Apple Watchについての記事も、近いうちに書きたいと思う。

 

本題にもどろう。

なぜ「メガネ」と「スマホ」は、競合も融合もしないのか。

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なぜなら、顔面に着けるアイテムは、あらゆるファッションアイテムの中でも最も目立つ存在だからである。だからこそ、おしゃれと、やむを得ない視力矯正以外の目的でメガネをかける人が少数派であることは、未来永劫変わらない。スマホのような手持ちのデジタルデバイスでも充分代替可能な機能を使うために、あえておしゃれを犠牲にする人はあくまでギーク層であり、永遠に一般消費者の多数派にはならない。これは、どんなに自然なデザインやおしゃれなデザインのメガネデバイスが出ても変わらないし、仮に将来ギークファッション自体がブームになったとしても、デジタル機能のためのメガネを着ける人は多数派にはなり得ない。

余談になるが、もしかすると顔を隠しつつおしゃれをする必要があるイスラム圏の女性を中心にファッションアイテムとしてのメガネ型デバイスが広く普及する未来の可能性は、他の文化圏での普及の可能性よりも少しだけ高いかもしれない。そこを起点にイスラム圏以外の男女層にまで爆発的に普及するというのは、なかなか考えにくいが。

 

さて、一方で「顔面デバイスに搭載しなくてはならない明確な理由」を持つ一部の機能だけが、メガネに搭載されて、それを必要とする一部のメガネユーザーに普及する近未来は充分あり得る。ただし、この場合はスマホとの併用が大前提だ。

それでは、メガネに搭載しなくてはならない機能の例を、具体的に考えてみよう。

  • 視力のサポート
  • 眼球の動きを読み取るセンサ
  • 視界のライフログを記録するカメラ
  • 骨伝導イヤフォンマイク
  • 周囲に気付かれたくないプライベートな情報閲覧
  • ARやVRで視界に重ねて表示した方が圧倒的に便利な機能

これら以外の機能、例えば一般的な情報の閲覧や入力は、手元の画面で操作した方が圧倒的に利便性が高いので、形状が板状なのか棒状なのかが変化しても、スマホ的な手持ちのデバイスがなくなることは絶対にないのである。そもそも、そんなに全人類が両手を空けておくことに圧倒的価値を感じてるのなら、今ごろリュックサック以外のバッグは廃れているはずだよね……。

 

この辺、元記事のJIN社は全て理解した上で、浮わついたSF的なウェアラブルデバイスじゃなく地に足が着いたニッチ仕様のJiNS MEMEを作ってるんだと思う。方向性としては、SONYが作ってる、アナログ腕時計のベルトにセンサと通知機能と決済機能だけを埋め込んだWENAに近いし、それがウェアラブルデバイスについては今後も正しいアプローチだと思う。

jins-meme.com

wena.jp

 

あらゆるデバイスは、手に持って使っているうちは「道具」の要素が強いが、身体に身につけた瞬間に厳然たる「ファッションアイテム」になる。ある人が日常的にiPhoneを使っていても、今やそれだけでセンスを問われることは無いが、Apple WatchやGoogle GLASSを毎日身に付けていたら、それはその人のファッションセンスとみなされる。エンタープライズ領域や、ギーク層の利用を超えて、一般層への普及を考えるなら、この「ファッションアイテム」という側面を軽く見積もってはいけないと思う。

Twitterは情報インフラとして生き残れるのか

今、創業者のひとり、ジャック・ドーシーがCEOに返り咲き、大胆なサービスと収益構造の改革に乗り出そうとしている「Twitter」について、こんな記事が出ていた。

business.nikkeibp.co.jp

「出戻り経営者」という共通点だけでジョブズを持ち出す、この記事タイトルのセンスは微妙だし、Facebookと単純比較をするのも投資家以外には意味が無いと思うが、言わんとすることはわかる。革新的なソーシャルメディアであり、情報インフラであったTwitterへの期待感が、急速にしぼんで行く現状を憂えているのだ。

 

自分は、2010年に国内初のTwitter分析ツールを開発し、Twitterを中心にソーシャルメディアの活用支援をする会社を経営し続けて7年目になる。いちユーザーとして、ビジネスパートナーとして、日々Twitterを見続けて来たので、NewsPicksなどでやいのやいの言われているのに我慢ができなくなって、この記事を書いてみた。

 

まず、大前提として、日本国内におけるTwitterの地位は、かなり盤石だ。FacebookとLINEしか使わず、特定の趣味も持たない30、40代以上の社会人からは、Twitterってまだ流行ってるの? 的な感覚かもしれないが、Twitterは日本国内のアクティブユーザー数で1980万人(2015年10月時点)。(追記:2016年2月18日、初めて公式にTwitterの日本国内アクティブユーザー数が発表された。その数は3500万人。やはり盤石だった。)。10代・20代には圧倒的な利用率だし、主婦層から高齢者層まで男女ほぼ同数で広く分布している(ちなみにFacebookは2400万人)。

みんなが街なかでTwitterについて口に出さなくなったのは、趣味アカウントや愚痴アカウントが上司や家族や知人にバレるのを防ぐためであって、多くのユーザーは複数アカウントを駆使してひそかに使い続けているのだ。Instagram(国内で810万人)の伸びが著しいが、あちらは日常の瞬間を切り取った写真が中心。Twitterは言葉が中心なので、根本的に住み分けられている。

 

さて、それではTwitterならではの良さとは、ソーシャルメディアとして他のサービスとの差別化要因とは、何なのだろう。


結論から言うと、Twitterのコアとなる価値は、以下の3つだ。

  1. 即時性 (時系列順のタイムライン)
  2. 匿名制 (趣味嗜好が開示しやすい)
  3. 透明性 (情報流通インフラの役割)

1. の「即時性」を支えるのは、140文字の投稿制限と、時系列順の表示と、モバイル投稿前提の設計思想だ。リアルタイム性と、気軽な投稿のしやすさを実現している。

140文字制限により、タイムラインの全内容が、詳細クリック不要で「流し見」できることも重要なポイントである。

2. の「匿名制」は、Facebookに比べてターゲティング広告面で不利という意見があった。しかし、Facebookは年齢性別のデモグラ分析は得意だが、本当の趣味嗜好を実名でさらけ出す人が少なく、興味分野の正直な情報は得られない。

一方でTwitterは複数の匿名アカウントをアプリに連携したり、テレビなどを観ながらのダブルスクリーン利用が主流なので、ユーザー個人の趣味嗜好が丸わかりになる。Twitter広告の管理画面を見れば、そのターゲティング精度の高さに驚くはずだ。

3. の「透明性」だが、これは今や失われつつある。

今やTwitterはかつてのRSSのような情報流通インフラとして機能しているが、これは初期サードパーティーへのAPI開放と、トレンドキーワード、リツイート機能によるところが大きい。

しかし、今やAPIの対応が後手後手だったり、公式アプリ以外のアプリを差別したり、Facebookを真似して非時系列のアルゴリズム式フィード表示を検討したりと、Twitterとサービス連携して何が出来るのか、どんなユーザーにどういう形で届くのか、がどんどん不透明になりつつある。

 

まとめると、これら3つの価値を損なわず、さらに強化するUI/UX改善を行えば、Twitterは今後も唯一無二の存在であり続けられるだろう、ということだ。

 

一方、サービス体験の改善だけでなく、収益構造の改革も急務だ。

その鍵は、個人課金……個人的なアイデアとしては「個人がお小遣いで配信できる手軽な広告」なんじゃないかと思っている。例えばうまい大喜利ネタを思いついた時、告知したいイベントがある時、フォロワーを募集したい時などに、たった100〜500円ほど払うだけで、フォロワー以外にも、より多くの人に見てもらえるというブースト課金機能だ。事前に設定しておけば「ブーストボタン」のワンタップで行けるくらいの手軽さが理想だ。承認欲求を課金で満たすという機能だが、上手く行けばソーシャルゲーム並みの廃課金ユーザーが出るくらい、売上が伸びると思っている。

もし、このままTwitterが衰退するようなら、Twitterの次に同じような規模で情報流通インフラを構築する業者は当分出て来ないだろう。GoogleやAmazonのような企業からは、Twitterのように個人データの塊のようなメディアが魅力的に映るだろうが、自前で運営して成功するとは思っていないはずだ。

これは過去の事例から導き出した法則だが、SNS以外の大規模インフラ事業を手掛ける会社が運営するSNSは、ほぼ確実に失敗する。最初は、保有するユーザー数の大きさも手伝ってそれなりのスタートダッシュを切るが、大成功はしない。Appleのping、Google Plus、Amazonや楽天、携帯キャリアの運営するサービスなど、枚挙にいとまがない。つまり、ユーザーはビッグ・マザー的なインフラや個人情報データを司る存在の手の平の上で、個人的なSNSを楽しみたくないわけだ。楽天やAmazonのIDでひも付けて匿名SNSをやるなんて、マイナンバーをTカードにひも付けるようなものだ。だったら、SNS専業の会社や、小規模ベンチャーの手掛けるサービスであってほしい、というのが自然な意見だと思う。

 

一般に、SNSの寿命は数年。その衰退のきっかけは、自分の新しいステータス変化(最新の写真、卒業・就職・転職・引越し・結婚などのステータス変化)を、どのSNSで更新するか、ということに現れる。今、転職先の情報をmixiにアップデートする人も、mixiのアイコンが数年前から変わってないから変えようと思う人も、ほぼいないだろう。アップデートする気がしなくなったSNSは、滅びて行く。その点、TwitterはSNSというより情報インフラであり、ステータスの変化をアップする必要性が高くないので、経年劣化には強いはずなのだ。

情報インフラとしてのTwitterは唯一無二の存在だし、その役割はまだまだこれからなので、ぜひとも透明性を高めつつ頑張って欲しい。

 

サードパーティーとして、Twitterへの一番の要望は、数年間放置されているAPI 1.1のバージョン更新です。せめて、検索結果の過去ログやアンケート機能など、Web版のTwitterと同じ体験を提供できるようにバージョンアップしてください。マジでよろしくお願いします。

いま話題の「湯河原 おんやど恵」で開発合宿した

先日、はてなブックマークやYahooニュースなどでも話題になっていた、開発合宿の新定番「湯河原 おんやど恵」で実際に開発合宿をしたので、簡単なレポートを書いてみる。結論から言うと、開発合宿の新定番になるにふさわしい宿だと感じた。

www.onyadomegumi.co.jp

 

僕の経営するアーガイル株式会社では、2009年の創業以来、毎年1度は開発合宿をしている。開発するものは、自社メディアの新しいSNSだったり、既存サービスの新機能だったり、要するに社内プロジェクト案件だ。

まず、これまで実際に開発合宿をしたおもな宿と、感想を列挙してみよう。

 

今までに開発合宿をした主な宿 瞬速レビュー

伊東 山喜旅館

開発合宿の定番だったので、初回はここにした。全館木造の増築しまくり建築で、風情というより懐かしさと隙間風を感じる。おかげで無線LANは宿泊部屋内でも良好だったが、温泉がとにかく狭い。本当に狭くて驚く。料理は海鮮中心だったが普通。チェックアウト後に会議室を有料で数時間借りられたのは良かった。

伊豆天城温泉 禅の湯

伊豆で別のところを攻めてみたら、あまりにも遠すぎた。東京から片道3時間半とか、開発合宿じゃなくて遊びに来てるとしか思えないレベル。しかも駅からタクシーで30分くらいで超遠い。宿は寺に隣接する宿坊で、肉や魚を使わない精進料理だが美味しかった。温泉設備(岩盤浴あり)もよかったが、全体的にやや割高で、何しに来たんだっけ的な感じで反省する。

那須高原 ペンショントワイライト

宿名も室内も、すごく「かまいたちの夜」っぽかったので決めた(こんや12じだれかがしぬ)。料理は美味しかった。「はっちゃけルーム」と呼ばれる、多目的カラオケ部屋を数時間くらい借りられたが、他の宿泊客との取り合いになるので、基本は部屋でベッドに座っての開発になった。昼飯や買い出しなど、何をするにも車が必要で、レンタカーを借りなかったのを激しく後悔した。でも室内にこもるのが開発合宿だしな……。

晴海グランドホテル

都内で企業が大人数で合宿したい時の定番。研修特化型で会議室の各種備品や、印刷などのビジネスセンター系のサービスが整っており、非常に快適。ただ、少人数だと会議室代が高い。部屋はビジネスホテルそのままで、大浴場は無し。食事は大部屋のバイキングで中々良かった。目の前にコンビニ、歩いて5分の所に晴海トリトンスクエアがあるので、昼飯には困らない。

湯河原 おんやど恵

会議室が快適。温泉と料理がとにかく最高。東京からのアクセスも素晴らしい。開発合宿先の新定番と言える。詳しくは次の章で。

 

おんやど恵のよかったポイント

東京からのアクセス抜群(東京駅から90分。駅から5分)

これ、とても重要。駅からタクシーやバスで5分というのも重要なポイント。

深夜も使える設備充実の会議室

WiFi 環境、電源タップ、ホワイトボード、冷水とお茶のセット、コーヒー(別料金)、プロジェクタとスクリーン(別料金)など、各種の設備が揃っている。宿泊期 間中ずっと貸し切りで施錠もできるので、前日の環境そのままでスタート可能。昼は休んで夜中じっくり開発したい夜型のエンジニア集団にも対応できます。

ひと晩中、広い温泉に入れる

朝までひと晩中いつでも入れる温泉がとにかく最高。露天風呂もある。サウナは22時までなので注意。

ご飯がとても美味しい(これ超重要)

まじめな合宿の場合、楽しみは何といってもご飯。おんやど恵は、老舗の高級旅館だけあって、格安のプランでも本当に料理が美味い。

ハーゲンダッツとうまい棒を完備

ハーゲンダッツは自販機で、数種類が24時間購入可能。宿内の売店には、エンジニア定番のうまい棒とカップラーメンなども完備。

社長が元エンジニア

なんか、インターネット時代以前のシステムエンジニアって、凄い職人魂みたいなのが感じられて尊敬します。エンジニアの気持ちに合わせた心遣いを感じます。

足湯とマッサージチェアと美味しい麦茶も無料

足湯しながら開発OK。豪華なマッサージチェアも24時間いつでも利用無料。冷たい麦茶サーバもあって、飲み放題です。

宿泊料が1人1泊1万円

ブログを書いている方を対象にしたモニタープランなら、さらに半額になるとのこと。


【ひみつ情報】 近所の焼き鳥屋が超美味い

焼き鳥も釜飯も、出て来るもの全てが美味しくて最高。梅宮の辰ちゃん御用達らしい。

鳥助

食べログ 鳥助

 

おんやど恵のもうちょっとポイント

会議室やロビー周辺は高速無線LANで快適だが、客室で無線LANが使えるわけではない

→ 2018/6 追記:なんと客室を含む全館で高速無線LANが導入されていた!

コンビニがやや遠い(徒歩10分)

→ 2018/6 追記:なんと宿のすぐ隣(徒歩30秒)にローソンが出来た!

温泉と料理が素晴らしすぎて、むしろOFFの時に行きたい

→ 2018/6 追記: 思わず、OFFのときも個人的に来てしまった!

 

開発合宿を企画する上でのポイント

2泊3日以上がおすすめ
夜更かしし過ぎない
必ずお楽しみタイムをつくる

 

普段と違う環境で、集まって行う開発は、やはり効率がいいですね。

設備の整った快適な温泉宿での開発合宿、おすすめです!

 

アーガイルの新サービスのGraphy グラフィー | マイベストでつながる、趣味が同じひと限定SNSの、オープンβテストもお楽しみに!