モフモフ社長の矛盾メモ

ヒゲとメガネとパンダと矛盾を愛するアーガイル社のモフモフ社長が神楽坂から愛をこめて走り書きする気まぐれメモランダム

はてブオフ会に込めた裏の意図 〜狂言回しの司会者が語る最終総括〜 前編

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はてブオフ会」という物語をどう綴るか

カオスな群像劇としてではなく、あえて1人を中心にした物語として今回のはてブオフ全体を描くなら、主人公として一番面白いのはコウモリ氏 id:Rlee1984だろう。

そして、その事実こそが、多くの人をイラッとさせている原因でもある。

今回のオフ会は、怒涛の準備期間からオフ会終盤のプロポーズというフィナーレにいたるまでの、コウモリという、ひとりの未熟な主人公の成長譚だった。

ヒロインは、もちろん彼の現フィアンセ、マドモワゼル・マリーヌ。だが、古めかしい冒険譚で最後に現れて結ばれる姫のように、彼女の影は薄い。

舞台を盛り上げ、中心点からかき回してカオスな場を作るのは、トリックスター役のヒャッハー斎藤 id:netcraft 。今回のオフ会の主催者だ。

そして、はてなブックマークというサービスの世界観を信奉し、それを体現する預言者を自ら任じて、企画運営のアドバイザーならびに当日の司会者としての狂言回し役に徹していたのが私、モフモフ社長 id:shields-pikes である。

はてブオフ会というひとつの物語の裏側の世界を、今から語ろうと思う。

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妄想や戯言と思うなら、そう考えていただいて構わない。後づけの解釈、ご都合主義と捉える方が自然かもしれない。

だが結果は、全て自分のねらっていた通りになった。それだけは真実だ。

隠されたミッション

今回、準備委員会に参加した時点で、モフモフは個人的に3つの達成目標(ミッション)を立てていた。

  1. はてな村古参勢ではない企画メンバー中心で、オフ会を成功させること。
  2. はてなブックマークの世界観を貫き、それをリアルな世界で再現すること。
  3. オフ会の前後で、はてブユーザー同士の関係性や空気感を変化させないこと。

のちに、ここに4つ目のミッションが追加されるのだが、それは追って語って行こう。これらのミッションを含め、今回のエントリで語る内容は準備委員会の誰にも話していない。だから、いわば、隠されたミッションだ。

1つめのミッションから順番に語って行こう。

今回は、私が知る限り初めてに近い、はてなブックマーカー中心の大型ユーザーオフ会だ。これだけは、絶対に失敗させてはならない、と思っていた。

理由は簡単だ、自分ははてなブックマークというサービスを心から愛しているからだ。自分が参加しようがしまいが、はてブオフ会の名を冠する以上は、はてブの世界観を崩すような適当なオフ会だけはやってほしくない。

そして、はてな村民と呼ばれる古参ユーザーやブロガー連中による、人脈という既得権益をベースにした馴れ合い、年功序列的なヒエラルキーにも辟易していた。
古参ではないユーザー中心に仕掛けたオフ会がサムい結果に終わり、古参以外のユーザーやはてなブックマーカーメインのユーザー達が、はてな村民からナメられるのだけは嫌だった。

それなら、いっそ自分も主体的に参画して、成功確率を上げよう。そのような意図を持って、オフ会の準備委員会に参加した。

単なる「オフ会としての成功」なんてのは、そんなに難しくない。

親睦を深めることなんて、インフラ(施設、アクセス、資材、受付、飲食物、片付けなど)の計画と当日の運営をしっかりする、席順に気を配る、一部の人のノリだけで暴走しない、会話の時間をたくさん作る、積極的に会話をしなくても楽しめる仕組みにする、周りに馴染めない人をフォローする、リスクを想定しておきトラブルを未然に防ぐ、あたりを守っておけば問題ない。

自分も、5年前の創業時からアーガイル社の主催で100人規模の参加者が来る花見イベント(ソーシャル花見フェス)を毎年開催したり、最近ではnoteユーザーのオフ会を企画したりと、色々やっているので、ある程度の成功ノウハウはある。

それよりも、「はてブらしさ」を失わずに(世界観を守り、慣れ合い過ぎずに)、いかに着地させるかがキモだと思っていた。

はてブオフ会成功の判断基準とは?

今回、外部から見ても誰もが認めるような成功を狙うのであれば、何をもってオフ会を成功とみなすかの基準を考えなくてはならない。
個人的には、以下の5つだと考えた。

  • a. コントローラブルな揉め事や対立や炎上以外には大きな事件やトラブルを起こさないこと
  • b. オフ会に行かなかった人間が悔しがるくらいに盛り上げること
  • c. 参加した人間が賛否問わずレポート記事をどんどん上げたくなるほどの話題性を提供すること
  • d. はてなブックマークの世界観を踏襲したイベントにすること
  • e. 過度な馴れ合いを避け、はてブ特有の殺伐さを忘れないこと

a.については、はてなスペースでの議論や打合せの席上でも積極的に関与した。カオスなオフ会、殺伐とした会、手斧の投げ合い、と口で言うのは簡単だが、本格的な罵り合いや殴り合いの喧嘩や、不審者による凶器の持ち込み、殺傷事件など誰も望んではいるまい。そのため、参加者への注意事項の文言は自分が書いたし、妙な予告もあったので、形式だけでも荷物検査を徹底してもらうことにした。安全第一。文化的な意味でのカオスとは多様性の許容であり、決して戦争状態の再現ではないのだ。
正直、殺伐さを体現するイベントとして、企画初期の頃はブックマーカー同士のパネルディスカッション系の企画も考えた。だがイベント進行の時間や登壇者選びの関係で断念した。まあ、個人的にid:xevra氏と生討論してみたかっただけなのだが。ただ、これは実現しなくて良かったと思う。理由は後編でお話する。

b.とc.については、皆が同じような意識を共有できていたのではないかと思う。この辺りの、盛り上げたい&話題性を高めたい、という前向きな意志で、コウモリ氏を中心にして準備委員会は健全に団結感を増していったと思う(学校や会社みたいでキモいけど、プロジェクト推進には大事なことだ)。
特に id:kiku-chan さんの冷静さと手の器用さ(名札制作)と段取りの良さは、a.とb.とc.という通常のオフ会としてのクオリティを底上げするのに大きく貢献していたのではないか。ちなみに、委員会側でイベント場所のロケハンも専用機材の準備もせずに id:kybernetes さんにツイキャス配信を機材準備から当日の撮影まで丸投げ状態でお任せしてしまっていたのは、非常に申し訳なかったことで、今回で最大の反省点だと思っている。ほとんど当日のお願いだったにも関わらず id:hnnhn2さんに即興で音響担当をしていただいたのも、ありがたかった。入場テーマの岡村靖幸「ビバナミダ」は僕の趣味です、すみません。

多少のミスやトラブルはあったが、多くの準備委員の尽力の結果、a.b.c.においては、オフ会としての成功レベルには達していたと思う。

だが、d.とe.を最初から最後まで強く意識していたのは、自分以外に委員会内にもあまり多くなかったのではないかと思う。
もちろん、d.の世界観を再現することにおいて id:yuiseki さんのツールが果たした役割は非常に大きかった(あれは本当に凄いツールなので、ぜひ汎用サービス化して欲しい)。またid:sabacurry さんは、当日の飲食系の裏方チーフとして id:hinaho さんらと共に、a.のイベントの正常な運営と後片付けにとてつもない貢献をしていたが、同時に企画段階からe.の過度な馴れ合いを避けるという点においても自分とは比較的認識が近かったように思っている。

自分も「はてブの世界観を大事に」と言うことを表立って主張したことは、そんなに多くなかったが、企画発案やアドバイスをする時は常に頭のなかにあった。
ヒャッハー斎藤氏が、当初のコンセプト「はてなに物申す」(そんなのオフ会イベントでやることじゃないだろ)を、途中から「はてブユーザーの親睦」という腑抜けた目的に差し替えた時にも、俺は絶対にはてなの世界観だけは守りぬくと内心決意していた(その発露のひとつが、後述するxevraさんへの挑戦状という実験エントリだ)。

ブックマーカーは電動河豚の夢を見るか

2つ目のミッションは、はてなブックマークのコンセプトをリアルな世界で再現すること。しかし、どうやって?

自分だけが、オフ会の場を擬似的なはてブ空間に仕立てることにこだわった。これは、ほとんど誰にも言ってない、個人的な裏ミッションだ。ネット上に偏在するはてブワールドを、リアルなオフ会という場に一点集約し顕在化するには、いくつかの仕掛けが必要だった。

今回のオフ会のために特別に用意されたツールがある。「はてブユーザー戦闘力可視化ツール」、「ステータス入りの名札」、「リアルはてなスター・シール」の3つだ。
正直言って前の2つ、ツールと名札の制作には、自分はほぼ関わっていない。自分が中心となって発案し、購入して実現させたのは「リアルはてなスター・シール」だ。だが最初の打合せで、プロトタイプの戦闘力可視化ツールを見た時に、この「スカウター」があればリアル世界にはてブワールドを擬似構築できると思い、名札にパラメータを印刷して配るという意見に強く賛同したのを覚えている。

自分は、これらのツールと各種イベント企画を活用し、オフ会の会場内で、はてなブックマークのUX(ユーザー体験)を、再現したいと考えた。オンライン上の関係性や行動・体験を極力そのままオフラインに落とし込むことで何が起きるのか、その実験こそが、はてなブックマーカーのオフ会を開催する意義のひとつだと思ったからだ。

そして、その実現には下記の4つの要素が必要と考えた。

  • A. 共通テーマ提供による即興コメント促進
  • B. 対立構造の導入
  • C. 参加者のメタ・キャラクター化
  • D. 承認構造の可視化

これらを順に説明して行く。

A. 共通テーマ提供による即興コメント促進 = 記事とブックマークコメント

今回、メインイベントとして、ライトニングトークやid:topisyuさんによるお題の提供と即興コメント(会話)という企画を用意した。
企画が多すぎる、という声は最初からあったが、それでもこれらの企画を最後まで押したのは、お題に対してリアクションするのが得意なのがブックマーカーなので、ネタが必要だと思ったからだ。ライトニングトークは、参加者の個性を活かした驚きと多様性に満ちた発表が多く、ヒャッハー斉藤氏の発表は正直微妙だったが、全体的に予想を遥かに超える盛り上がりを見せた。あれが無ければ、イベントはかなり淡白なものになっていただろう。

一方で「その場で記事にブックマークする企画」は、企画自体の練り込みが甘くて正直成功とは言えなかった。topisyuさんに記事選びを依頼する、という話の流れになっていたので、彼女と面識のない自分は、後はヒャッハー斎藤氏とコウモリ氏に任せようと思った。だが、飲み会の場で周囲の人と会話しながら、スマホで長文記事を読解して、裏の意図を読みつつ気の利いたブックマークなんて、出来るわけがない。脊髄反射的に大喜利レスをつけられる、3行くらいの増田とかがちょうどいいと思っていた。

企画の概要もわからずに協力を快諾していただいたtopisyuさんに責任は無い、企画の発案者である自分と、お題の発注者との意思疎通が取れていなかったのが問題だ。ここは、準備の終盤に仕事が忙しくなって、言い出しっぺにも関わらず企画を任せきりにしていた自分として最大の反省点である。

そういえば、コウモリ氏が「企画の主担当をそれぞれ決めて、進めて行きたい」と言い出して、自分だけで抱え込まずに仕事を分担し始めたのはいい傾向だな、と思っていたら、4つ全ての企画の主担当を企画発案者という理由だけで俺に振って来たので、司会をしつつそこまで出来るか!とキレたのを思い出した。コウモリ氏、なかなか面白いやつである。

B. 対立構造の導入 = 古参と新参、慣れ合いと手斧の投げ合い、リア充と非リア充

オフ会前に多層的な対立構造を導入しておくことは、必須だと個人的に考えていた。これこそが、コントロールできる「文化的殺伐さ」の根源だからだ。
自分が主に考えていた対立軸は、3つ。はてな村の古参と新参、慣れ合いと手斧の投げ合い、リア充と非リア充だ。これらを混ぜあわせて使うことにした。
その中で、「はてブ婚」というキーワードは、全ての対立軸を含むもので、とても便利だった。さらに、自分が発表したい趣味でつながるSNS「グラフィー」のPRにも文脈が上手くつながるな、とひとりでほくそ笑んでいた。その意味で、コウモリ氏のサプライズ・プロポーズの話を聞いた時にも、これは対立軸を明確化させる、よく燃えそうな燃料が出て来たぞと思い、二つ返事で協力を請け負ってしまったわけだ。この辺りの顛末は、後編で詳述する。

ただ、はてブ婚なんてのを推しまくるだけだとキモ過ぎて、対立を煽るどころか引かれそうなので、足りていない別の軸の要素をあえて投入した。それが「id:xevra先生、出て来いや! - モフモフ社長の矛盾メモ」の記事である。ネットオンリーで活動する大物ブックマーカーとの無粋な対立構造を煽って、古参ユーザーの眉をひそめさせたかったので、あえてアホっぽくid:xevraさんにつっかかってみた。ここの顛末についての詳細も、後編で述べたいと思う。
自分は本来、はてブ婚とか男女の出会い目的のオフ会をはてブで開くことは大反対派だったが、それを早々に出し過ぎてしまうと、当日のあわよくば感とか勘違いする人も減って面白くなるので、我慢していた。対立構造を解決すること無く、くすぶらせた状態でオフ会を迎えるようにしたいと思っていたのだ。

その意味で、ヒャッハー斎藤氏が立て続けに繰り出してくる脈絡の無いネタの投下は、流石のトリックスターっぷりだった。しかし余りにも意図が読めな過ぎて、向精神薬を常用しているしもう離婚しようかと思ってる、みたいな話を釣り半分で出して来た時は、正直イラッとした。自分は、かつて大学時代に大切な友人を救うことが出来ず亡くした経験があるので、雰囲気メンヘラとかファッションメンヘラみたいな発言は大嫌いなのだ。

C. 参加者のメタ・キャラクター化 = 極力ハンドルネームとしての人格を保ってもらい、はてな村社会の現状を露呈する

これはyuisekiさんの素晴らしすぎる「はてブスカウター」の仕組みと、それを名札にしたおかげだ。ステータス入りの名札は、yuisekiさんのツールで、はてなAPIから抽出した戦闘力データ(ブクマ数、お気に入られ数、取得スター数)を出力して、id:pero_pero さんがデザインし、kiku-chanさんがヒモを手でつけていた、Web技術と家内制手工業の融合によるハイテクハンドメイド名札だ。

この名札があることで参加者達の多くは、初対面のおっさん同士としてではなく、ブックマーカーアイデンティティのまま交流することに成功していたと思う。相手を対面で知り合った一個人としてではなく、はてブユーザーという色眼鏡を通して見る、という流れに持って行くことに成功した。はてな村の有名人は黙っていてももてはやされ、無名のユーザーは積極的に行動しなければ女性参加者であろうが放置される。後半は誰でも自由にトーク発表をしていいと告げていたが、結局は有名人しか話さない。数少ない例外は、増田を代表して想いを語ってくれた彼と(あれは面白かった。はまちや2さんが背中を押してくれたらしい)、無名ながらも自己アピールと全くステマじゃないアカマ(あからさまマーケティング)をして勝手に目立とうとしていた自分くらいのものだ。

まさに、はてな村の悪習がそのまま体現されていた。はてブワールドは、自らの言説だけを武器に、手斧を持って戦う孤独な常在戦場ではなかったのか? いやいや、実際のところは古参ユーザーによる年功序列と、お気に入られという既得権益の根が隅々まで張り巡らされた村社会だろう。はてブの軟弱なオフ会を茶化し「手斧はどうした」などと馴れ合い姿勢を批判している古参達こそが、一番馴れ合っている。これこそが、実際のはてブワールドの真実である。これを露呈したかった。そしてこの仕掛けは、後編で解説する「xevra先生出て来いや」の伏線にもつながっていく。

D. 承認構造の可視化 = リアルスターシールの貼り合いで、はてブの慣れ合い構造を象徴するスターの再現

もちろんはてブは、古参同士の馴れ合いや、それにおもねる新参者の見苦しい姿だけではない。はてブでは独力で大喜利やダジャレという孤独な戦いをしたり、辛口コメントなどの手斧を投げ合っている者も多いのだ。とはいえ、ひとりで生き抜く戦場ほど、辛いものはない。基本的には大喜利も、共感した相手に☆をつけあう馴れ合いの場だし、辛口コメントにつけられた同意のはてなスターは、馴れ合いを超えて、時に形を変えた手斧になりうる。そこもはてブの魅力の1つだと思っている。

スター機能は、はてブにおける、良き馴れ合いの象徴だ。だから、オフ会という馴れ合いにしかならない場所を、「日常を異化した非日常」としてメタ化させ、日常としての「はてブ」を変わらず守るためには、オフ会自体をリアルスターの投げ合いの場にするのがいいんじゃないかと思いついた。

そうすれば象徴的な意味では、馴れ合いの目的はあくまでスターシールを集めること(承認欲求を満たすこと)であり、心に手斧を隠し持った人も自分がスターを得るためなら馴れ合うし愛想もよくする、といういつものはてブと同じ世界になる。ブックマーカーが現実世界で馴れ合うためには、非日常的な舞台と、逃げ道となる言い訳が必要なのだ。
たぶん、リアルスターシール企画を最初から最後まで強行に推してたの自分だけだったし、実際にひとりでシールの調達や人数分にするべく裁断までした。

オフ会後のみんなの名札を観る限り、実際に多くの参加者がコミュニケーションのためにシールを活用してくれていたようで、これは嬉しかった。

天空に広がるはてブワールドは、果たして地に降りたか?

これら、共通テーマの提供による即興コメント促進、対立構造の導入、参加者のメタ・キャラクター化、そして承認構造の可視化、4つの仕掛けによって、自分はオフ会の会場に擬似的な「はてブワールド」を作り出したつもりだ。そんな誰も気づかない面倒くさいことを狙った目的は、何か? その結果とは? それは後編でじっくり語って行きたいと思う。

その前に前編でも少しだけ、準備委員のメンバー達がオフ会準備が進める中で起きたことを、その渦中にいた者の立場から語ってみよう。この「はてブオフ会」という物語を裏の裏まで読み解くことがあなた(読者)の目的ならば、次の章はコウモリという主人公の内面の理解につながるかもしれない。

準備委員会の上空をふらふらと舞うコウモリ

オフ会の準備委員会は、誰もが思っていた通り暗礁にのりあげた。委員会が立ち上がり、はてなスペースでのブレストと、初回の顔合わせとも言える打合せ&飲みを終えて、1週間ほど経った時だった。

自分も、この準備委員会のメンバーでは、近いうちに破綻するか失敗するか、だろうなと思っていた。良くて分裂、悪くて解散だと。ヒャッハー斎藤氏に義理もないし、自分だけで主催できるほど知名度も低いし、本業が忙しくて時間にも余裕がないし、成功させるのが不可能そうなら早めに手を引こうと考えていた。

だが、ひとりの男の動きを見て、考えを変えた。それが、コウモリ氏だ。

最初のうち、彼は本当に使い物にならなかった。以前に、はてなブックマークユーザーの詳細な分析記事を書いて、はてな村に颯爽と現れた時は、わりと見所がある奴が現れた、と思っていたのだが、実際に一緒にプロジェクトを進めてみると、空回りだらけの単なる使えない新人だった。

そして、どう考えても、最初から最後までヒャッハー斎藤氏は神輿でしかなくて、フルコミット出来るコウモリ氏が準備の中心人物だった。それに気づいている人が少なかった。自分はヒャッハー斎藤氏が広告塔でしかないのには最初から気づいていたが、実行隊長のコウモリ氏をこき使うべく、上司であるヒャッハー斎藤氏自ら全権を委任しているのかと勘違いしていた。しかし、実際のところコウモリ氏はヒャッハー斎藤氏や他の実行委員に遠慮し過ぎて、自分で何一つ決断しようとしていなかったのだ。当初から自分は企画アイデア出しには積極的に参加してはいたが、誰もが言いっぱなしでひとりも仕切る人がいない惨状は、見るも無残だった。

はてなスペースなんていう暗黒地下迷宮並に階層が深く、超絶不便な場所で、関連スレッドが分裂しまくったグダグダのブレストもどきを何日間続けるんだよ、という状態が続いた。その間もコウモリさんは、ブレストで出た案を取捨選択したり、まとめることなく、せっせせっせとログを単純に追加し、上乗せして行く。全員の意見を平等に扱い、一切取捨選択も整理もせず、決定事項が1つもない。

その時点で、これは失敗するかな、と思った。一度厳しいダメ出しをして、逆ギレしたり、落ち込んでるようなら、もう辞めようかとも思っていた。

ヒャッハー斎藤氏がメンヘラ気味の離婚話養子話をアップした時が、自分的に降りようと思ったピークだった。本気かどうかは知らないが、あの手のネタは心底嫌いだ。その頃に、初期から準備委員としてかなり精力的に動いていた、id:dora-kou さんによる的確なダメ出し記事が出た。

おいらが見た、はてブオフ会の準備が混沌化する経緯

 貴重な戦力であるdora-kouさんは、これ以降一線を退いた。この記事のブコメに書いたとおり、自分も同じタイミングで退こうかと思っていた。だけど、最大の心残りだったのは、yuisekiさんの開発しているツールだった。あれだけは埋もれさせてしまうのは惜しい。ただ、自分が主催者になって仕切り直すほどはてな内での知名度も無いし、実行部隊の中心になるほど自由にできる時間も無いのだ。

しばらく準備委員のスレッドを見ない日が続いた。すると、idコールがあった。
気がつけば、コウモリ氏が、今までのスレッドを全部消して、自分の考えでカテゴリを整理しなおしたっぽい新たな大量のスレッドを作りなおしていた。

いや、それ全く同じことだから! と、彼の空気の読めなさに、ひとり大爆笑した。
コウモリ氏は、本当にまだまだひよっ子だが、とにかく空回りしながらも懸命に前進し続けている。一方でフランス人を街でナンパするほどの(俺にはできない)謎のポテンシャルがある。そして一見繊細そうに見える外見はまやかしで、単に細部のこだわりが強い偏執狂的な神経質さの現れであって、彼の本質は全く空気を読まない図太さにある。それを伸ばしてみたくなった。

その頃、ヒャッハー斉藤氏が「コウモリさんに一任しまーす」と、あまりに遅すぎる全権委任宣言を出し、3mmくらいのリーダーシップのかけらを見せてくれた。こうなりゃ、乗りかかった舟だし、俺が関わった以上は絶対に成功まで持って行こうと思った。それがオフ会の約3週間前。

そして、そのためにはフルコミット出来る数少ない人材であるコウモリ氏を徹底的に動かすしかない、と決意した。

4.オフ会準備を通じて、中心人物であるコウモリ氏を大きく成長させること。
という、自分の中に、新しいミッションが加わった瞬間だった。

 

非常に長くなったので、前編はここでお終いだ。
残りは後編の記事で書こうと思う。

はてブオフ会というコンテクストの中で、コウモリ氏のプロポーズの果たした意味とは、なんだったのか。自分がxevra氏に挑戦状を送った本当の意図と、はてな村への想いとはなんなのか。そして、自分が描いたはてブオフ会の完成図の全貌とはどんなものだったのか。3つ目のコンセプトは果たされたのか。このオフ会の前後で、はてなブックマーク界隈はどう変わって、どう変わらなかったのか。

後編に続く。
遅筆ですが、この記事がわりと好評なら頑張って急いで続きを書きます。

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